伊織

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 色んな大人が来て色んな説明はされた。  新也も両親と来て、驚くほど謝られた。  そして、説明されても正直よくわからなかったが……私たちの赤ちゃんは生まれてすぐに別の人に引き取られたらしい。  何とか女の子だったことは聞いたが、写真もなく、抱いてもいない赤ちゃんはいつの間にかなかったことにされた。  お母さんと新也の両親が話し合って色々したらしいが、“解決した”と私たちにはほとんど教えてもらえず、さっさと話を締め括られた。  顧問とか先生たちも来てくれたが、ゆっくりとは話せないまま……。  少しして春休みになり、退院して三年になっても、周りは何一つ変わっていなかった。  確かに望んだ、何事もなく迎えた三年生の春。  赤ちゃんが産まれたのに……実感はないが、確かに産まれたはずなのに……。  ただ“赤ちゃん”の存在だけがあの日急に消えた。
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