伊織

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「……ずっと気持ち悪くて、貧血気味」  口を開いても先生たちの声は優しかった。   「生理は?」 「…………ずっと来てない」 「いつからか覚えてる?」 「……夏くらいから」  交互に焦らず聞いてくれる先生たちのお陰で、溜め込んで目を逸らし続けた不安要素が少し解放される気がする。 「病院は行ってない?」  頷くと、先生たちは顔を見合わせた。 「お家の方には相談した?」  首を振ると、 「ね、伊織」  顧問はゆっくり私の名前を呼ぶ。 「隣に座ってもいい?」  頷くと顧問はえへへ、と笑って私の隣に座った。  その瞬間、お腹の中でグニッと動かれて呻く。 「……ねぇ、伊織?本当にわからない?」  そんな私の肩にそっと触れると、顧問はゆっくり背中を撫でてくれた。 「…………赤ちゃん……居る」  認められず、向き合えず、ずっと誰にも言えずに堪らえてきた言葉。  口に出した瞬間に涙が溢れて止められなかった。  
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