伊織

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「新也には?言ってないの?」  顧問が覗き込んできてどう答えるか迷う。 「……クリスマス前に知らねぇって言われて……そのまま……」  普段あれだけベタベタしている私たちのことはほとんど知られているし、下手に誤魔化しても意味はない気がしてそのまま答えた。  話す間もグニグニとお腹の中で動かれて落ち着かない。  新しい生命!!   そんな感動より、得体の知れないものへの恐怖……そっちの方が大きいから。 「美作(みまさか)さん、わからないことだらけで不安だろうけど……ちょっと現実の話をするから落ち着いて聞いてね」  先生に言われて、ギュッとスカートの裾を握ってから頷く。 「単純に考えて……八、九、十、十一、十二、一、二、三……約八ヶ月ってことはもう中絶もできないの」  指を折りながら数えて先生はこっちを見た。 「中、絶……?」 「うん、お腹は八ヶ月とは思えないくらい小さいけど、たぶん週数は相当経っていると思うのね?」  先生が気を遣いながら話してくれているのはわかるのに、グルグルと頭の中で耳から入った言葉が回り続けて理解ができない。 「大丈夫?まずはお家の方に来てもらって一緒に病院で診てもらった方がいいと思うけど……」  お母さんには知られたくなくて首を振る。  頭がグラグラするし、気持ち悪いけど止められない。  グニとまた更に動かれて私は堪えきれずに吐いてしまった。
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