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〇〇
「突然すいません。美作伊織さんですか?」
家を出たところで声を掛けられて反応に困る。
これはそうだ、と認めていいのか、いけないのか?
そもそもこんな女子高生?……知らない。
「申し訳ございません!急に声かけられたら驚きますよね。私、久住一花と申します。こっちは娘で……」
後ろから来た六十代半ばの女性は私に声をかけてきた女の子の手を引いて一緒に頭を下げた。
土曜日の昼間、自宅の目の前。
これはどうしたらいいのだろう。
「あ、どうも……」
とりあえず私も頭を下げると、女の子はニッと歯を見せる。
その顔はどこかで見たことがある気はするが、記憶を辿ってもやはり初対面だ。
「あの……お母様には連絡していましたが、直接お話するようにと伺っておりまして……今、お忙しいですか?」
「いえ、コンビニに出ただけなんで……」
お母さんに連絡済?と思いつつ何となく気になって女の子を見る。
「もしよかったら……少しお話できませんか?」
「えっと……」
母親らしい女性に言われて適当な言葉を考えた。
だが、何も思い浮かばない。すると、
「ごめんね!どうしても私が“お母さん”に会いたかったの!」
にっこり笑われてすぐには理解できなかった。
「申し訳ありません。本当は会えないことになっているんですが、どうしても娘が「産んでくれたお母さんに会いたい」と言い出しまして」
ペコペコと頭を下げられても動けない。
産んでくれたお母さん?
それって……。
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