僕の知らない唄

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 灯台の光が満潮の海面に一筋の白い線を伸ばしていた。風が強く、波は激しく海食崖の断面にぶつかり地形を削っている。空は厚雲が覆っていて星一つ見えない夜だった。  僕は崖の上から海の様子を俯瞰しようと思い、近づいてみたが、海から吹き荒れる風の力で持っていた傘が飛ばされてしまったので断念した。   まるで、海の神が人間を遠ざけようとしているみたいだ。大自然の力により文明を妨げ、魚たちを守っているようだ。その力により、僕は海から仲間外れにされてしまったのだろうと、肩を落とした。  僕の身体は雨に打たれて、全身に鳥肌が立っている。意識して風を感じれば、ぶるりと震えるほどに外気は冷たい。靴の中で雨水を含んだ靴下が、歩く度にぐちょぐちょと音を立てていて気持ちが悪かった。  僕はとりあえず、灯台の内部に避難することにした。入口の鉄扉を開けると、ひび割れたコンクリートの螺旋階段があり、上まで行くことができる。扉を閉め、ノイズみたくがなっていた雨音が静かになると、今度は上の方から、女性の歌声が聞こえてきた。螺旋階段の真ん中からまっすぐ僕に向かって降りてきているような、明瞭で聞き心地の良い声だ。
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