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「おはよう、朝よ」
「やだ、眠い」
「どれ。のびる のびる のびーる」
小学校低学年くらい迄、母が起こしに来てくれて脚、腕、お腹って順番に摩ってくれた。子供が大きくなるようにって、願いを込めたおまじない。
全身の血行が良くなるのか、気持ち良く起きられる。
その後母は、そっと右手を包み込んで、囁くように薬指を撫でる。
「のびろ のびろ のびーろ」
ハイハイをしていた頃、ポットを倒して火傷した。一番酷かった右手の薬指は、足の裏の皮膚の一部を、パッチワークした。ちょっとだけ成長が遅く、骨の成長の方が早かったので、猫背気味の薬指を母は気にしていた。
子供の火傷は親の責任。ずっと悔やんでいた母は、大人になっても私の右手をとっては、小さな声で呟いていた。
「のびろ のびろ のびーろ」
お母さんありがと。ほら、ちゃんと伸びてるよ。見て。
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