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「だからですよ。俺等全員、竹本が練習強制するのに腹を据えかねていたんです」
合唱コンクールあるある、やる気のある仕切り女子がウザい。と、言ったところだろうか。
だが、これは毎年の開催の度に起こる小さな軋轢に過ぎない。始めは非協力的でもなんだかんだで本番が近くなれば真面目にやるもの。井藤先生も舞香がやる気があり仕切り屋になっていることは知っていたが、毎年あること故にとやかく言うことはしなかった。
「おいおい? 乗り気じゃない男子が当日になって叛逆したってのか? こういう『クラスで仲良し小好ししない俺カッケー』ってしたかったつもりか? そう言うのが許されるのは中二までだぞ?」
「あの? 先生? 俺、野球部のキャプテンなんですけど。合唱コンクールの練習期間中、殆ど部活の朝練出られなかったんですよ?」
すると、基来に続いて他にも数人が挙手を行った。彼らはいずれも朝練を行うサッカー部や剣道部などと言った運動部である。
「俺もです」
「あたしも」
「僕も」
井藤先生は彼らに尋ねた。教室に訪れる前に他の先生方から合唱なき合唱について詰問されている為に苛々としており、その声には怒気が込められている。
「お前達、部活とクラスどっちが大事だ?」
教室内に沈黙が訪れる。彼らはこの三年間部活に打ち込んできた者達、瞬時に「部活です!」と言いたいところであるが、それをクラス担任である井藤先生に向かってハッキリ言うことは憚られる。
基来は重い口を開いた。
「その質問、合唱コンクールの練習が始まった初日に竹本に言われました。俺、キャプテンだし朝練と放課後練が長くなるのは勘弁して欲しいって言ったんですよ。そうしたらいきなりギャン泣きしだして『部活とクラスどっちが大事なの!?』って叫ぶんですよ。そういうこと言われたら部活行くのも躊躇うってもんですよ」
それを聞いた舞香は悪びれもせず、平然と述べた。
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