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「中邨さんがいると合唱コンクールで優勝出来なくなるから『当日は休め』って」
すると、多香子と舞香は数回目配せをした後に悪びれずに宣いだした。
「だ、だってねぇ? 中邨さん音痴は並外れてたし」
「そうそう、単独不協和音? 聞いてるだけで共感性羞恥で恥ずかしくなるみたいな?」
「絶対優勝したかったから、後顧の憂いを断つために欠席して貰ったの」
「今朝の最後の練習なんか、完璧だったよね」
「これで優勝出来ればクラスの皆の結束も固まるし」
井藤先生は修羅の形相で二人を睨みつける。
「音痴な奴を除外して、上手い合唱に仕上げて手に入れた優勝か? お前ら、これでいいと思ってるのか?」
「な、何よ…… 優勝は優勝でしょ? スポーツだって下手な奴は試合に出られないじゃない。中邨さんの音痴ぶりで減点されて、優勝逃すの嫌だったら休んで貰っただけ! それのどこが悪いの?」
基来が挙手をし、立ち上がった。
「この二人、優勝のためならどんな犠牲も問わないクズですよ? 音痴を必要以上に詰ったり、声が小さかったりやる気のない男子に指揮棒投げつけたり、音楽室で練習した時なんかいつもピアノ叩きつけてましたよ? ヒステリー起こす音楽教師みたいなことされたら楽しくないですよ? 合唱コンクールって皆で楽しんで歌うことが目的でしょ? 何でこんなことになってるの?」
そう言えば、考えたことがなかったな…… 井藤先生であるが教師生活は長いものの合唱コンクールを行う理由を一切考えたことがない。それ故に上から聞くマニュアルを素直に読み上げにかかる。
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