結束と叛逆の合唱

9/11
前へ
/11ページ
次へ
「中邨さんがいると合唱コンクールで優勝出来なくなるから『当日は休め』って」 すると、多香子と舞香は数回目配せをした後に悪びれずに宣いだした。 「だ、だってねぇ? 中邨さん音痴は並外れてたし」 「そうそう、単独不協和音? 聞いてるだけで共感性羞恥で恥ずかしくなるみたいな?」 「絶対優勝したかったから、後顧の憂いを断つために欠席して貰ったの」 「今朝の最後の練習なんか、完璧だったよね」 「これで優勝出来ればクラスの皆の結束も固まるし」 井藤先生は修羅の形相で二人を睨みつける。 「音痴な奴を除外して、上手い合唱に仕上げて手に入れた優勝か? お前ら、これでいいと思ってるのか?」 「な、何よ…… 優勝は優勝でしょ? スポーツだって下手な奴は試合に出られないじゃない。中邨さんの音痴ぶりで減点されて、優勝逃すの嫌だったら休んで貰っただけ! それのどこが悪いの?」 基来が挙手をし、立ち上がった。 「この二人、優勝のためならどんな犠牲も問わないクズですよ? 音痴を必要以上に詰ったり、声が小さかったりやる気のない男子に指揮棒投げつけたり、音楽室で練習した時なんかいつもピアノ叩きつけてましたよ? ヒステリー起こす音楽教師みたいなことされたら楽しくないですよ? 合唱コンクールって皆で楽しんで歌うことが目的でしょ? 何でこんなことになってるの?」 そう言えば、考えたことがなかったな…… 井藤先生であるが教師生活は長いものの合唱コンクールを行う理由を一切考えたことがない。それ故に上から聞くマニュアルを素直に読み上げにかかる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加