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結束と叛逆の合唱
そのコンサートホールでは、とある中学校の合唱コンクールが開催されていた。
一年生から各クラスが順々に合唱を行っていき、二年生の全クラスの合唱が終わったところで、次は三年生の合唱となる。
三年一組の皆が舞台に上がり整列を終えたところで、コンサートホールが静寂に包まれる。
それから、アナウンスがクラスと合唱曲の紹介を行う。
「続いての合唱は、三年一組。合唱曲は『マイバラード』、伴奏は大島多香子(おおしま たかこ)さん。指揮は竹本舞香(たけもと まいか)さんです」
舞香は舞台袖の緞帳脇から歩き出し、指揮者台の前に立ち緊張で全身を震わせながらも観客席に一礼を行い、指揮者台へと乗った。目に入るのはクラスメイト達。舞香は全員を見渡すと、「準備はいい?」と言うかのように軽く頷いた。クラスメイト達は舞香を見ることでそれに応える。
舞香が右手を上げると、クラスメイト達は一斉に足を開いた。それから多香子がマイバラードの伴奏を開始する。
マイバラードの前奏が終わり、クラスメイト達は一斉に合唱を…… 行わなかった。
それどころか、口を真一文字のままで固定し開いていない。
なんと、全員が足を開いた仁王立ちのまま直立不動の体勢なのである。
指揮を行う舞香は何が起こっているのかが分からずに困惑するも、指揮を続け手を止めない。伴奏の多香子も皆の合唱が聞こえずに困惑するも、伴奏をやめずにマイバラードを弾き続けている。
観客達は合唱を行わない三年一組に疑問を抱き困惑しつつも、伴奏のみのマイバラードを清聴するのであった。
三分弱の伴奏を終え、多香子が手を止める。それと共に舞香も手を止め、指揮者台から降りて観客席に一礼を行った。
観客席の観客達は何が起こったかが分からずに困惑するも拍手を行う。拍手が鳴り止んだところで、三年一組のクラスメイト達は舞台袖へと捌けていき観客席へと戻って行った。
その後、三年二組の合唱が行われたのだが…… 普通に合唱を終えた。
その後のクラスも同様である。
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