かみのけ、かみのけ。

　これは、私が中学生だった頃の怖い話。
　みんなは、美容院や床屋にどれくらいの頻度で行くだろうか。髪の毛の手入れがどれくらい大変なのかは、髪の長さや質に大きく影響することだと思う。私は女子なので男子の事情はよくわからないが、お父さんやおじいちゃんの様子を見るに、一定年齢以上の男の人は髪の毛の手入れに無頓着なことも多いらしいと知っている。
　多分だけれど、髪の手入れを気にするのは女性の方が多いのだろう。髪が長い男性もいるが、それもやっぱり女性の方がまだまだ多いのではないだろうか。
　髪の毛が長いと、シャンプーしたり乾かしたりといったことに時間がかかってしまう。そのへんの手入れは、髪の毛が短い方が楽だ。
　ただし、髪の毛が短い人はハネやすいし、頻繁に美容院に行かなければいけないという面倒くささもある。その頃私は男の子みたいなショートヘアにしていたので、一か月に一度は髪の毛を切らなければいけなかったのだった。
　なお、ショートヘアにした原因は、以前長い髪の毛が扇風機に巻き込まれそうになるという事故を起こしたからである。大事にはいたらなかったが、それ以来怖くて髪の毛を伸ばせなくなってしまっていたのだった。
　同時に、モノグサなので毎日長い髪の毛を洗って乾かして、ということが非常に面倒くさい。
　ゆえに私は、母に“そろそろ髪切った方がいいんじゃないの”と言われるタイミングで切りに行くのが多いのだった。

『すみれちゃん、女の子なんだからもうちょっと髪の毛気使ったら？ぼさぼさになってきたらみっともないわよ』
『うえええええ……めんどくさ。お金かかるし』
『みっともないって言ってるの！明日の学校帰りにでも行ってらっしゃい！』
『……はーい』

　まあこんなかんじ。
　私がいつも行く美容院は決まっていた。駅前の“コルネット”というお店だ。
　ちなみにコルネットは、楽器のコルネットから来ているらしい。吹奏楽部ではないのであまり詳しくないが、トランペットと同じような楽器だという。実際それっぽいマークが書かれている。
　ぶっちゃけ、トランペットと何が違うのかはさっぱりわからなかったけれど。