IV

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IV

『姉ちゃん、婚活うまくいった?』  1ヶ月ぶりの弟との電話の冒頭はこうだ。ドレスの件で気にはなっていたらしい。 「あれはフリだから。今はしてない」 『ふーん。じゃ俺が先に彼女紹介して良い?』 *  古びた実家で両親の隣に座る。大きな台を挟んで向こう側に座っているのはスーツを着た弟とフォーマルな格好をした華やかな女性だ。 「〇〇商事の事務をしています」 (エリートじゃない)  ふと、〇〇商事に聞き覚えがあったことを思い出す。 「あの、生田富雄さんってご存知ですか?」 「えぇ! 勿論! とても良くしてくださる営業さんです!」 *  彼女曰く、生田は子供好きで気の良い人らしい。営業成績も抜かりなく、真面目な人だと。 (婚活以外では普通の人なんだ)  キワモノを見に行った筈なのにその人が自分よりもマトモな生活を送っていることに少し罪悪感を覚える。
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