プロローグ

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「こだわりがあって。じゃあ、俺は調理に戻るので」  俺は時計を見てスープの配膳に戻る。季節のそら豆をふんだんに使ったスープは自信作だ。仕上げに生クリームをひと回し。  女性陣の表情でわかる。  今日も俺の料理は最高だ。  その後、タイマーできっちり秒単位でスパゲッティを茹でた。旬の春キャベツとパンチェッタ(塩漬けの豚肉)で作ったアーリオ•オーリオ(オリーブオイルとニンニクのソース)だ。  女性陣は黄色い声を出しながらパスタを食べていく。 「......。」  俺はその様子をじっくりと観察する。 「美味しいっ......今まで食べたどんなスパゲッティよりも美味しいです!」 「それは良かった。嬉しいです」  食後のコーヒーを皆が飲み終わった頃、婚活女が俺を上目遣いで見ながらこう言った。 「あの、次もパスタを是非ーー」 「いいえ、次はありません」  俺はニッコリと笑顔を作り、女達を丁重に追い出した。
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