I

1/3
前へ
/21ページ
次へ

I

ーSide織部(おりべ)麻那菜(まなな) 「え? 婚活パーティーで会った男の手料理パスタが忘れられない?」 「そうなの、声かけられた本人は二度と連絡付かないらしいんだけどね〜」  私は友人の有紗に連れてこられたイタリアンでパスタを巻いていた。アーリオ•オーリオ•エ•ペペロンチーノ、所謂ペペロンチーノである。  オリーブオイルにニンニクの香りを移し、唐辛子を効かせた非常にシンプルなパスタだが、シンプルがゆえに料理人の腕がわかるという。  ここは名店『ヴィラ・ムラノ』。  ここのイタリアンは相当美味しいと評判なのに、どうも有紗は婚活に邁進する友人に誘われて食べに行った謎の男の手料理パスタのことが気になって仕方がないらしい。 (食べてみたい)  結婚したくても相手が見つからずに料理を振る舞う男のパスタは、きっと何にも変え難い業に包まれた珍しいものだ。 「顔もスペックもいい男だったのよ〜? 物件としては最高。誘ってくれた私の友達も本命だったみたい。でもね、なんで帰されたのか、切られたのか全くわからないんだって」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加