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II
ーSide 生田富雄
「なぁぁんで彼氏持ちが婚活パーティーに来てるんだよぉぉおおおおおお! マッチングアプリじゃないんだぞぉ!」
「いや、マッチングアプリでもダメだろ」
俺は自慢のアイランドキッチンがよく見えるダイニングテーブルに突っ伏していた。
向かい側に居るのは数少ない友人の向井。俺の作った珈琲入り特製ブラックカレーを食べている。
「はいはい、黒髪セミロングの猫みたいな眼をした謎の女、ね」
「はー、折角38人目にして条件に合う人が見つかったと思ったのに」
「38人+友人だからおもてなし人数は100人超えてるだろ......」
俺がこんなにもおもてなし食事会に固執するのには訳がある。食事をしながらでしか確かめられない恋人に求める条件をチェックしたいのだ。
「俺はただ、自分の作ったパスタが伸びないように完食するまで黙って味わってほしいと思ってるだけなのに!」
「それ、初めに言えばいいじゃん」
「違う! 違うんだ! 心の底から”俺のパスタを味わっている表情”こそ、俺が見たいものなんだ」
「めんどくせ」
向井は遠慮なく炊飯器からご飯をおかわりしていく。
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