II

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「まぁ、でも、わからんでもないか。最初から条件出してたら気に入られようって振る舞われること、あるもんなぁ」  そうなのだ。婚活は後出しジャンケンでないと嘘をつかれる可能性がある。 「俺は収入があって見た目も良いから、好かれようと躍起になる女子を見るといたたまれないんだ」 「自分で言うなし」  ハイエナのようなギラギラした目をした女子に何度もつけ回されたことがある。  卑怯だと罵られようが、これは俺にとっては立派な婚活の駆け引きなのだ。 「じゃあなんでその女、家まで来たんだよ」  それは俺も疑問だった。俺目的ではないということは、つまり。 「パスタのため......?」 「まぁ、お前の料理の噂が広まっててもおかしくないしな」  パスタを食べるために嘘をついてまで婚活パーティーに参加する。 「パスタを愛する女性、良いじゃないか。是非とも結婚したい」  俄然、燃えて来た。壁は困難な方が燃えるというものだ。  しかし、拳を握る俺に向井は冷たい目を向ける。 「でも、32歳の年上で彼氏いるんだろ。無理だろ」
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