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5 一丁目の神社
書店の仕事にも慣れてきた頃、その日は咲夜さんとおつかいに行く事になった。
同じく3丁目の猫又家がやっているお饅頭屋に向かった。
「あらぁ~、咲夜さん、久しぶりですねぇ~。
ここんとこお見えにならんかったさかい、お忙しいんかと…」
猫耳の付いた優しげな雰囲気のイケメンが言った。
「ちょっと書物作りで篭っててな。
新しい味の饅頭あるかい?
あ、こっちは、狐光美緒だ。
うちの見習いだよ。」
咲夜さんは言った。
「こりゃあ可愛いらしー見習いさんで…
あ、チーズ饅頭が入荷してますわ~!」
咲夜さんはチーズ饅頭のところに向かった。
私はなんとなく店の中を見回していると…
「美緒さん、試作品のアップルパイ饅頭食べますかぁ?」
と、猫又さんが声をかけてきた。
「はい!」
私は言った。
アップルパイ饅頭を差し出す猫又さんの手に素敵なブレスレットがしてあったので。
「素敵なブレスレットですね。」
と言うと…
「あぁ、これねぇ、実は一丁目の神社のお土産コーナーで買ったんですわ~。」
と言った。
私はハッとした。
アップルパイ饅頭を放り投げて一丁目に向かって走った。
神社…!
神社…!
神社…!
どこ…!?
どこなの!?
私は一丁目を駆けずり回った。
だけど、30分探しても神社は見つからなかった。
その時、石につまづいて転んでしまった。
「大丈夫ですか?
お嬢さん…?」
ふと顔を上げると、咲夜さんと並ぶほどの銀髪のイケメンが居た。
「あ、いえ、大丈夫です…」
私がそう答えて去ろうとすると、彼は私の手首を捕まえた。
「あなた…
あやかしではありませんね…?」
そして、低い声でそう言ったのだ。
「ちょ、ちょっと、離して…!」
私は握られた手首を離そうとするが、力は入るばかりだ。
や、やばい…!
そう思った時!
「美緒っ…!」
咲夜さんがやってきた。
「咲夜さんっ…!」
私も叫び返す。
「鬼流さん、悪いが彼女は俺のところの者だ。
その手を離してやってくれないか?」
咲夜さんは銀髪の男性にそう言った。
「…ま、良いでしょう。
今回の所は、ね。
鬼と狐の真剣勝負にも興味が無い事はないですが…」
そして、鬼流さんは手を離した。
私は咲夜さんに抱きついた。
「お嬢さん、気をつけて帰るんですよ?」
そして、鬼流さんは去っていった。
「馬鹿か!
お前、何やってるんだ!」
咲夜さんは私を抱き上げながら、そう言った。
「だって…
一丁目に神社があるって…
猫又さんが…」
「そう簡単には帰れねーよ。
とにかく怪我の手当を…
帰るぞ。」
そして、私は咲夜さんに抱えられて狐光書店に帰った。
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