6 龍王の姫

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6 龍王の姫

それから、一ヶ月後。 転けた傷も癒えた頃、私はその日相変わらず咲夜さんとお出かけした。 咲夜さんが新しい着物を買ってくれるというのだ。 向かった先は四丁目の蝶花呉服屋。 「あら、いらっしゃい。 咲夜、久しぶりね。」 超美人の背の高めな女の人が現れてそう言った。 濃い紫の蝶柄の着物を着ている。 「あぁ、彩音久しぶりだな。」 咲夜さんが朗らかな笑顔で応えた。 な、な、なんなの!? 下の名前で呼ぶほど親しいの…!? 私は既にヤキモチモードに入っていた。 そして、着物をあーでも無いこーでも無いと試着して、桃色の花柄の着物に決めた。 咲夜さんがお会計している間に、私は蝶花彩音さんと話をした。 「ふふふ。 噂は聞いているわ。 美緒ちゃんね? 咲夜はね、少しツンケンしたところがあるけど、本当は優しい人よ。」 「え… あの、咲夜さんとは…?」 「付き合ってるのよ、私たち。」 そう言われて私の心臓は隕石が落ちてきたみたいな衝撃を受けた。 好き…だったんだ… 私… 咲夜さんのこと… いつの間にか好きになっていた… 私は呉服屋を飛び出した。 走って走って、一丁目まで来ていた。 「おや、美緒さん? どうかしたのですか? 泣いているじゃありませんか!」 鬼流さんと遭遇して、鬼流さんはハンカチを差し出した。 「大丈夫です…」 「とても、大丈夫そうには見えません。 そうだ、そこの座敷童喫茶に入りませんか? あんみつでも食べましょう?」 鬼流さんと、なぜか座敷童喫茶に入る事になった。 「ねぇ、美緒さん。 龍王の姫の話を知っていますか?」 泣いている私を慰める訳でもなく、鬼流さんはそう話を振った。 「え、えぇ… 童話ですよね?」 確かに狐光書店にもある。 「あれね、童話じゃ無いんですよ。」 「えっ?」 「その昔、今は絶滅した龍王がこのあやかし街を統べていました。 龍王は戯れに訪れた人間界で1人の美しい姫に遭遇します。 人間界のお姫様です。 一目惚れした龍王はお姫様を攫いました。 怒った人間達はあやかし街に攻め入ってきました。 そして、大きな戦いが始まったのです。 結局お姫様は連れ戻され、龍王は自害しました。 しかし、龍王はその時に最後の力で大きな結界を張りました。 二度とこのような悲劇が起きないように、人間界とあやかし街の間にね。」 鬼流さんは話し続ける。 私はなぜかその話の続きを聞きたくて… 「童話では大体ここまでで終わっています。 でもね、この話には続きがあるんです。 それは…」 そう言ったところで…! 「美緒っ…!!!」 咲夜さんが走ってやってきた。 「咲夜さん…」 「おやおや、うるさいのが来てしまいましたか…」 鬼流さんが肩をすくめる。
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