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1 あやかし街へ
私の名前は吉野美緒。
どこにでもいるOL…のはずだった…
たった今会社から解雇宣告をされたばかりで、会社近くの神社の階段に座り込みぼーっとしている。
さっき買った缶のアイスコーヒーはすっかりぬるくなっていた。
だけど、どうすればいいのかわからない。
とにかく次の仕事…!
仕事を探さなくちゃ…!
そう思って鳥居の下を通って帰ろうとした時!
急に視界がぐらついた!!!
は…?
私はその場にしゃがみこんだ。
目眩が治るのを待って立ち上がるけれど、まだ、ふらついている。
何とか前へ歩こうとして男の人にぶつかってしまった。
ドンっ!
私の持って居た缶コーヒーがぶちまけられる。
「あぁー!?
大切な書物がぁぁああ!!!」
彼はそう言い叫んだ。
「ごめんなさい!
ごめんなさい!
弁償しますから!」
「弁償って、金貨30枚ですよぉ!?」
は?
金貨?
ふざけているのか?
「あのぅ、日本円で言うとおいくらに…?」
まさか、30万とかしないよね?とビクビクする私。
「ニホンエン?
何言ってるんですかぁ?
お姉さん?」
そう言われて、そっちこそ何言ってるんだ!
と、思いながらも周りを見渡すと…
そこは、江戸時代か明治時代のような街並みだった。
えぇぇぇぇ!?
どこ、ここ!?
私は混乱する。
その時!
「綺羅!
お前どこをほっつき歩いてる!?
犬尾さんから、まだ、書物が届いて無いと連絡があったぞ!」
黒髪のやや目つきの鋭い超イケメンが現れた!
「それがぁ!
このお姉さんが飲み物をこぼしちゃって…
書物ダメになりましたぁ…」
綺羅と呼ばれた男の子はしょぼんとして言う。
「はぁぁぁ!?
金貨30枚の品物だぞ!?」
「あの…
お取り込み中すいません…
けど…
ここ、どこ…?」
私は絞り出すように言った。
「はぁ?
どこってあやかし街…
ん?
お前…!!!
あやかしじゃ無いな!?」
イケメンの男性はそう言った。
あ、あ、あ、あやかしいいぃぃぃい!?
ど、ど、ど、どうしよう!?
大変なところに来ちゃった!?
「とりあえず、ここじゃ一目が多い。
綺羅、と、お前!
書物に戻るぞ!」
私は仕方なくその人について行くことに…
しばらく歩くと、『狐光書店』という昔ながらの書店が現れた。
本屋さん…?
私は2人に付いて中に入った。
裏の居住部分に入ると、江戸時代の家のように純和風の造りだった。
「綺羅、お前は店番しててくれ。
少しコイツと話がある。
あと、犬尾家に連絡の式神を出しておいてくれ。」
「分かりましたぁ!」
綺羅という少年が返事をする。
「こっちに来い。」
イケメンの男性は奥に進んでいった。
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