届け、この歌声

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「うわぁぁぁんっ」  涙の大コーラスが太陽の沈んだ会場外で響き渡る。  私達の高校は金賞には届かなかった。  あんなに練習したのに、あと一歩の銀賞。  評価もされたし、良くやったと思う。  でも、銀賞じゃダメなんだ。銀じゃこの先には進めない。私達の夏は終わってしまったんだ。 「あーっ! 悔しいっ!」  部長が腹の底から叫んだ。  でも、涙を浮かべながらもとびきりの笑顔を見せてくれた。 「でも、最高の合唱だった! みんなのおかげ。今までありがとう。私達の夏は終わったけど、あんた達、来年は絶対に全国行くのよ!」  悔しくてたまらないはずなのに。先輩の笑顔は月に照らされて、今までで一番輝いていた。  ……どうしたら、そんな表情が出来るんだろう。  私も三年生の最後は、こうして笑えていたらいいな。
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