佐々山電鉄応援団 第2巻

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ー ヘンテコな市松人形  ー  発表会の翌日。佐々山町の自宅  雑談程度に考えていた美佳ちゃんの携帯電話に、謎の電話が掛かってくる話は、実は継続していた。 奴は、確実に移動して美佳ちゃんに近づいてきていた。 美佳ちゃんは、午後3時頃に遊びに来た。 「さっき電話が来てな。例のロボ。最初は桐生市に居るって言われてな。一昨日は伊勢崎市。昨日は前橋市。そして今日は沼川市に居るらしいぞ」  僕が「ガチで近づいてきてるよ」と怖がると、愛理は怪訝な顔をした。 「さっきの電話は渋沢温泉に居るって」 愛理は「ちょっと。本当に呼び寄せたの」  カルピスウォーターを飲みながら、蚊取り線香を焚いてチリンと風鈴が鳴った。 美佳ちゃんの携帯電話も鳴りだした。 「ほいっ!美佳です」 『もしもし、アタシ。地獄沢に移動中よ』 「ほいっ。優の家に居るよ。来て良いよ」 『そう。あと3分で到着するわ』  僕にも、その不気味な音声が漏れ聞こえた。 僕は「美佳ちゃん、それ絶対に都市伝説の恐怖のギャッピちゃんだよ!」 「あー。最後に”いまアナタの家の前”とか”アナタの後ろ”って奴だろ。違うよ」  暫くして、美佳ちゃんの携帯電話が鳴る。 「ほい、美佳です」 美佳ちゃんは携帯電話をきると「玄関前に居るって」と笑った。  僕は、ゾッとした。 僕は「美佳ちゃん。それ尋常じゃない速度で移動してない?」 美佳ちゃんは「着いちまったんだから受け取りに行くか!」と立ち上がる。 そういうと、美佳ちゃんは何故か乾電池式の充電器を持って階段を降りていった。  ピンポンと玄関のチャイムが鳴った。 ギョェー。 暫くして、玄関の方で悲鳴があがる。 「美佳ちゃん!」  僕と愛理は、慌てて階段を降りて玄関に向かった。玄関先では、美佳ちゃんが立っていた。 地面に金髪のクルクルヘアー。洒落たドレスを着た市松人形が倒れていた。 その人形の、お尻から充電コードが伸びていて、市松人形はピクピクと痙攣をしていた。 大きさは身長が30センチくらいの人形。 美佳ちゃんは玄関の外履きサンダルで人形を蹴った。 市松人形はムクッと立ち上がった。 「殺す気かっ!」  市松人形は、物凄い形相で美佳ちゃんを睨むと怒鳴った。 「ほう。元気なロボだ。充電しなくても動くのか?名前は?」 「ギャッピ市松だ」 「ガッツ石松?」 「ギャッピ市松だ!」 「さてと伝票は何処?」美佳ちゃんは探すけど周囲には無い。  「伝票?そんなモンは無い。浮遊してきたからな」  市松人形は、自分でコードを抜くと 「ったく。いきなり人のケツに充電器をブッ刺しやがって。死ぬかと思っただ ろ!」  美佳ちゃんは、残念そうな顔をして 「なんだ。ロボじゃなくて呪い人形か。要らない。おかえりください」とドアを閉めた。
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