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二人がチェックアウトした翌日。
僕は、高崎から新幹線で東京に向かう。
予想よりも早く渋谷の駅前に居た。
駅前のヒカリエという高層ビルのオフィス層にあるインスタント・ハッピー・カンパニー日本支社。
研究所は長野県の軽井沢町にあって、渋谷オフィスとよばれるのは事業所部門だという。
受付を済ませると、会議室や面接をする部屋が並ぶ廊下を歩いた。
フワフワする絨毯が敷かれた廊下。
その両端にある壁には、サイエンスフェアでの受賞者、何かの賞でメダルを片手に歓喜する高校生の写真が掲げられている。
どうやら天才高校生集団というのはホンモノらしい。
一番奥の会議室は、ガラス張りで渋谷の街並みが一望できる展望台みたいな会議室だった。
奥に偉そうな幹部や外国人など10名ほどが居た。
すると、英語で幹部や外国人達は話し始め、暫くして会話が途切れると桜庭支社長が僕に「隣の会議室へ」と指示をした。
僕は、隣の会議室に案内される。
まずはデスクトップのパソコンで動画を見せられた。
海外の次世代路面電車の動画や、自動運転のバスの動画、自動運転に携わるエンジニアのインタビューとかだった。
桜庭支社長は「南場がしている仕事だ。技術系はウチには沢山いる」
今度は、僕がよく知っている交通政策とまちつくりの動画が始まった。
技術系の方はチンプンカンプンだったけど、この動画は興味深く、そして物凄く参考になった。
RRMSという次世代公共交通の説明場面、そして日本の過疎化地域が抱える地域課題の画面に共感を得た。
「さっきと目つきが違うわね。雨宮京子と同じ場面で、全く同じ反応かぁ。こりゃ。予想外にお買い得かもね」
続いて、紙の資料で説明を受けた。
LRT
通常のチンチン電車とは異なり洗練されたデザインで主に低床なためバリアフリーに適して、小型、省エネ、維持経費も通常の列車と比較すれば安価なため導入しやすい。
BRT
バス・ラピッド・トランジットの略。バス高速度輸送システム。
バス専用道路またはバス専用レーンを走行する事で渋滞は無く定時制、速達性に優れ、鉄道より安価で運行や維持ができる。
RRMS(Rail & Ride Mobility System)とは、LRTとBRTを道路に軌道を埋め込んだ専用道路を自動運転で運行。需要が多い時はLRTで運行、BRTは専用路線区間のみ自動運転として各方面にLRTの補完的な役割で等間隔運行を行う。等間隔運行には各バス会社との共同運行を行う必要があるため、独占禁止法違反に該当しないように特例処置を講じる必要がある。
RRMSは、交通政策で議論となる鉄道の廃止議論で問題視されやすい、鉄道施設の最低限度インフラを残す事でバス転換後の需要減少による代行バスの廃止という悪循環を低減し、マイカー利用者及び高齢者が免許返納した場合であっても”待たずに乗れる”というマイカーに劣らない魅力ある代替え交通、低床車両を使う事での身障者、高齢者負担減少、鉄道(LRT)と路線バス(BRT)の利点を生かし、欠点を補う次世代交通を担う。
RRMSのLRTは、3タイプで第一編成は電化方式、第二編成は電気とディーゼルのハイブリッド方式、第三編成は蓄電池方式になっている。BRTは、主に日野ポンチョの電気車を使用したレベル5。
技術的な面では、既に南場智子が率いるチームが動いているが、規制、法令、シェアリング(共有)、モビリティマネジメントの手法、市場形成などの調査などは京子ちゃんと僕が来ないと着手できない状態になっているそうだ。
インスタント・ハッピー・カンパニー研究所は、天才高校生にスポンサーを付ける。
桜庭支社長は「鈴木。オマエのスポンサーはドシキモ社だ。雨宮京子と鈴木はドシキモ社からのご所望なんだよ」
世界、そして日本でも育英財団みたいな組織はあって、優秀な学生に資金や活動の場を提供して研究開発に寄与する人材育成をする組織もあるらしい。
あくまでも、それは学生側が自分の研究や頭脳を、審査して貰い価値を見いだし適合すれば財団生になれるというシステム。
インスタント・ハッピー・カンパニー研究所は全く違う。
企業スポンサー制度。
日本に限らず、世界中の企業が、自社の研究分野に必要な優秀な人材を欲しがる。
いわば、究極の青田買い。
各分野の天才高校生をドシキモ社またはインスタント・ハッピー・カンパニー研究所がスカウトして仲介料をとるビジネス。
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