佐々山電鉄応援団 第2巻

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      ♢ RRMS発表会。  会場の前橋プラザ元気21に到着した。  元はデパートだった店舗を改装して多目的なホールにした建物。  馬場川通りから入ったので、国道50号線側から見ると、ちょうど坂道になっていて建物の1階部分が丸々ズレている。  会場は国道側の入口の1階から見れば、僕たちは地下1階から入る形になる。  会場に着くと、僕と同じメイド服をきた女子高生達が机を運んだり、会場設営の準備をしている。 「お世話になります。今日からお世話になります、鈴木優です」 「遅い!集合時間厳守!」  いきなり、いかにも気の強そうな女子がズカズカと僕に向かって歩いてきた。 「アナタ、新入り?雨宮京子のオマケの子ね?」 「オマケ?」 「まぁ、良いわ。アタシは猿山。福井商業高校の2年。アンタの先輩であり上司」 「あっ、鈴木優です。宜しくお願いします」  気の強そうな猿山って人は、応援団を一瞥すると美佳ちゃんを見て驚いている。 「瑠香様?」  急に美佳ちゃんに深々とお辞儀をした。 美佳ちゃんは「ほい?」と首を傾げた。 そして「他人の空似?」と呟いた。 「ほら。アンタはお客様じゃないんだから、直ぐに働きなさい」 良く解らないけど強制労働に加わった。 1時間くらいで会場設営が終わり、ミィーテイングに入る。 内容は、今日の技術発表の段取りだった。 ミィーテイングが終わると、南場さんと京子ちゃんが現れた。 京子ちゃんもメイド服姿。 思わず見とれてしまった。  猿山さんが「アンタ、男ってホント?嘘だよね。何処から見てもガチで女じゃん」 京子ちゃんがクスクス笑っている。 「うふふっ。ついてますよ。アタシ見ちゃったから」と言う。 「京子と鈴木はどういう関係なの?」 「相思相愛です」  猿山さんが京子ちゃんに何かを聞こうとしたタイミングで、南場さんが 「おーい。ランチョンミィーティング。時間が勿体ないから喰いながら映像見 てくれ」  リアルな3D画像で”RRMSの自動運転によるコンパクトなまちつくり”というタイトルが表示された。  ズンズンと重低音のBGMが流れる。  可愛いらしいアニメ声優みたいな声でナレーションが入る。 「みなさん。本日はご来場戴きありがとうございます。私達インスタント・ ハッピー・カンパニー研究所がお送りする”群馬県の新しい公共交通を活かしたまちつくり”のご提案について暫くの間、ご静聴をお願い致します」  そんな音声から始まり、群馬県の交通事情、地域課題、前橋市が行っている交通計画、群馬県が行っているMaaSの説明を終えると、RRMS導入の事業計画、軌道法適用区間、道路法適用区間、RRMS軌道・道路併用区間の説明、工法、マーケティング、地域の乗りたくなる交通へのマイカー依存者からの行動変容とかの動画が15分間流された。  動画を終えると、南場さんが「さすがは雨宮京子だ。痒い処に手が届く」と、この動画が京子ちゃんが関与している事を明かした。  僕は、サンドイッチと醒めたコーヒーを前に、レベルの違いに驚愕した。  そして、隣に居た猿山さんのパソコンには見たことの無い画面が表示されていた。 「なんですか?それ?」 「地理情報システムに入れる国土地理院のデータだけど。それが何か?」 「凄いですね」 「はぁ?コレをこれから鈴木も覚えてもらうんだけど?」  聞いたら、技術屋ばかりの南場チームで、いままで交通政策とまちづくりの 分野を猿山さんが一人でしていたらしい。  「せっかく雨宮と鈴木が来たんだから、やって貰わないとねぇ」  僕の後ろの客席で、呑気にコーラをゴクゴクと飲んでいる美佳ちゃん。  とんでもないハイレベルな場所に僕は入ってしまったようだ。
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