夢の代償

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私の名は柳沢実和子。シンガーソングライターを目指していたがある理由で断念。今はソングライター『Miwako』といて活動していて主にアイドルに楽曲提供している。 そんな私は今日も自室に設けた小さなスタジオで楽曲を制作していた。 「これでOK…と」 ある人気アイドルグループのアルバムの収録曲を仕上げると冷蔵庫を開け缶ビールと魚肉ソーセージ片手にソファに座った。 プシュッ!と軽快な音を立てビールで喉を潤し魚肉ソーセージを齧る。 一昔前の私が見たら卒倒しそうだ…。 5年前…長崎に生まれ幼い頃からピアノを習っていた私はシンガーソングライターを目指し福岡にある音楽スクールに通っていた。そこのスクールの主宰者がかつてのミリオンセラー歌手で彼女の後押しで歌手デビューした生徒が何人もいた。 「やっぱ『パレットラブ』ののぞみん可愛いわ」 今日もレッスンの合間に卒業生の話題で持ちきりだ。 『パレットラブ』は5人組の女性アイドルグループでその内2人はこのスクール出身だ。 今話題にでたのぞみんこと『のぞみ』はセンターでは無いもののグループのビジュアル担当と言われている。 「さやかは歌は上手いけどビジュアルは…地味だしのぞみんには負けるよね」 もう1人のスクール出身者は『さやか』少し大人しめの容姿だが歌の実力はグループピカイチで大御所演歌歌手からも歌唱力が認められている。 「なんだかんだでアイドルは見た目が命よ」 そう主張するレッスン生の秋山。彼女は見た目がレッスン生の中ではピカイチ。 「何言ってんのよ!アイドルは歌って踊れてなんぼよ」 同じくレッスン生の棚橋が反論するが…。 「あら…のぞみんだってレッスン生時代の実力は並以下だったのに見た目でたまたま視察に来た芸能事務所に誘われたのよ」 「お世辞にも歌は上手くないしダンスだって…まぁダンスはマシにはなったけどね…」 秋山は主張を曲げない。 私は苦笑いして話しを聞いていたが秋山はいきなり私に話しをふった。 「柳沢さんはどう思う?」 「え?」 話しをふられた私が「えー…」と答えに困っていると秋山は…。 「ゴメンゴメン…柳沢さんに聞いてもしょうがないか?」 一瞬時が止まった気がした…。 「だぁーってどんなに演奏出来ようが見た目がまあまあ可愛かろうが『そのダミ声』が全てを台無しにしているもの」 私が一番気にしていること…。 「ちょっと秋山さん!」 他のレッスン生達が秋山に苦言を呈するが秋山は止まらない。 「いっそのことグループでバックダンサーに徹すれば?声出さなきゃ大丈夫でしょ?それか裏方で曲だけ作ってれば?」 「そしたら私が柳沢さんの作った曲歌ってあげるから」 私は悔しくて悔しくてレッスン用の部屋を飛び出し、受付に「気分が悪い」と伝えそのまま帰った。
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