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失恋
「あまりの棒読みにあきれた」
店を出てすぐに颯真が言った。
「ひどい」
「他人のためなら嘘をつけるのに、なんで自分が絡むといきなりボロが出るわけ? それに、あのプレゼンみたいなの何? 最後はグダグダだし」
「颯真が余計なつっこみいっぱい入れてきたから!」
「数字に出されたら気になるだろ」
「意地悪」
「それで、今日って何の記念日?」
「それは……考えてなかった」
「だったら、今日は、オレの失恋記念日ということで、何か奢って」
「いいけど、口に合わないとか言わないでね。わたしが奢ってあげられる店なんて限られてるんだから」
「……やっぱ、オレが店を選ぶ。自分の記念日を自分で祝う」
「そうして」
「付き合ってくれるんだろ?」
「いいよ」
ふんっ、と口では不機嫌そうな物言いだったけれど、颯真は優しい顔をしていた。
「あの日、時計台の下で、何時間も香雅里を待ってた」
「電話、しようと思わなかったの?」
「……怖かったんだ。面と向かってフラれるのが。だから、香雅里が来なかったことが答えだと思った。その後はもう、香雅里を忘れるために女と遊びまくった。あいつが帰国した時には全部忘れて、笑って迎えられるように。でも、それって全然解決策になってなかったって思い知らされた。きちんと、終わらせるべきだった。2人のこと、思ったよりショックじゃなかったのは、きっとお前のおかげ」
「それはどうも」
颯真が香雅里さんを追いかけていたら、両想いだってわかったのに。
そうしたら、颯真は今、わたしの隣にはいなかった。
香雅里さんと柊真さんの想いが通じ合って、颯真はこれからどうするんだろう……
「どこか遊びに行こう。花蓮の好きなところでいいから」
その言葉を聞いて、ああ、そうかと思った。
そうだよね。
「行くなら、テーマパークがいいな」
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