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IKEDAは、株式会社池田を本社とする百貨店だった。
他の百貨店と大きく違うのは、通常取り扱われるブランド毎に、そのブランドのスタッフがその店のものを着用して店頭に出るところを、IKEDAでは、全てIKEDAの制服の着用が義務付けられている。
創業以来、「お客とスタッフは見た目で判断できなければいけない」という考えが守り続けられているからだった。
それでも、働いているスタッフは基本的に各ブランドで雇用されたスタッフだから、同じ制服を着ていてもそれぞれ個性がある。
特に、唯一自由が許されているスカーフの着用部分で差別化されていた。
「高村美月よ。美月って呼んで。私はIKEDAじゃなくてalternativeの方の社員ね」
話しながら美月さんは、わたしの一つに結んでいた髪の毛をほどいて、私物らしきヘアアイロンで巻いてくれていた。
「リップも、こっちの方がいいわ」
メイクも自分の持っているものを使って、わたしが普段つけたことのないようなピンク系のリップを塗ってくれた。
「靴だけはどうにもならないわね……私のサイズだと合いそうもないから。明日からはせめて5cmはヒールのあるものにして」
美月さんはスカーフも素敵に結び直してくれた。
「……マシになった、としか言いようがないわね。肌は、きめ細かくて羨ましいくらいなんだけど……眉をもっとちゃんと整えて! せめて下地だけはきっちりすればだいぶ違うし」
「ありがとうございます。勉強してきます」
わたしのその言葉に、美月さんは吹き出した。
「やだ。本当に勉強しそう」
笑われながら、売り場に戻ると、簡単に一日の流れを説明された。
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