IKEDA

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百貨店がオープンすると、ちらほらとお客さんがやって来たものの、全員が美月さんのところへ行くので、接客の様子を見たり、広げられた服を片付けたりした。 客足がおさまった頃、スーツ姿の男性が店に入って来た。 恋人へのプレゼントかな…… 「いらっしゃいませ」 声をかけ、その顔を見て危うく声を出しそうになってしまった。 あの日、カフェで会った、失礼な男だった。 男はわたしのことなんて、すっかり忘れているようで、何も気がつくことなく、優しく微笑んだ。 「IKEDAの人?」 「小鳥遊さん、こちら朝お話した御堂さん。alternativeの社長」 「今日からこちらをお手伝いさせていただく小鳥遊と申します」 「そうなんだ。大変だと思うけど、よろしくお願いします」 「はい。頑張ります」 御堂さんはくすりと笑うと、高村さんに向き合った。 「高村さん、あそこのディスプレイなんだけど――」 alternativeの社長だったんだ。 驚きながらも、納得してしまう。 社長だから横柄な態度も、派手な格好も許されるんだ。 でも、今目の前にいるこの男は、あのカフェで会った時とは全然態度が違う。 わたしにお菓子をくれた時と同じ、優しい感じがする。 2人の様子を少し離れたところで見ながら、この御堂という人は二重人格なんだろうか? それとも、ONとOFFを使い分けるタイプ? なんて考えていた。
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