御堂さん

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御堂さんには思いの外権力があったようで、わたしは早速次の日から、地下の食料品売り場に配置換えとなった。 パートのおばちゃん達に囲まれての仕事は落ち着く。 客層は老若男女様々だったけれど、ブランドものの服を扱うよりは全然わたしに合っている。 お昼の忙しい時間帯が過ぎて、一息ついたところだった。 売り場を見渡していると、御堂さんが立ってこちらを見ていた。 どっち? 見かけだけでは区別がつかない。 昨日、休憩から戻ってきた美月さんに、2人の御堂さんの話をしたら、「どっちがどっちか、わからないわよね」と言われた。 でも、顔は同じでも性格は全然違う。 彼らのことは、優しい方をON、意地悪な方をOFFと勝手に呼ぶことにした。 御堂さんはツカツカとこっちに近づいてくると言い放った。 「そっちの方がマシだな」 OFFの方だ。 「御堂さんが配属先変えるよう、口をきいてくださったんですよね? ありがとうございます」 「向上心のないやつ」 今……お礼言ったのに…… 「颯真、その言い方失礼だから。謝りなさい」 「事実を言っただけだから」 「謝りなさい」 「……悪かった」 「ごめんなさいね、颯真は口が悪くて」 「香雅里さん?」 「花蓮ちゃん! どうしてここに? 社員証は池田の販売促進部だったと思ったけど?」 「昨日からこちらへ異動になったんです」 「ねぇ、次に会ったら連絡先交換する約束覚えてる?」 「はい」 「じゃあ、仕事の後一緒に食事しましょう。いいよね、颯真?」 それって、OFFも来るってこと? それはちょっと……今だってすっごく睨まれてるんだけど…… 「あの、わたし――」 「決まりね。今日は何時に終わる?」 「7時に」 「7時に従業員出入り口の前で待ってるね」 「いえ、あの――」 香雅里さんは手を振って御堂さんと行ってしまった。 途中、振り返った御堂さんの顔が怒っているように見えた。 追いかけようとしたら、お客さんに声をかけられて、そのまま横目で2人の後ろ姿を見送ることになってしまう。 香雅里さんともう一度会えたことも、ご飯に誘われたことも嬉しいけれど、OFFも一緒だと思うと……怖い。
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