香雅里さんの気持ち

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コーヒーカップを片手に席に戻ると、香雅里さんがスマホを睨みつけていた。 声をかけてもいいのか分からず、そっと椅子に座ったつもりだったけれど、気づかれてしまった。 「何かあったんですか?」 香雅里さんはため息をつくと話し始めた。 「ここにいるのがバレちゃった」 「バレたって?」 「今日、夕方からパーティがあるんだけど、行きたくないから逃げてたの。それなのに、さっき柊真から『今どこ?』ってメッセージもらって、ここで花蓮ちゃんとケーキ食べてる、って返したら、それで家にバレた」 「あ、じゃあ、出ましょうか」 「行きたくない。どうせ行ったって、にこにこ笑ってるだけで、美味しそうなデザート食べられないんだから」 「食べたらダメなんですか?」 「パーティの最中はみっともないからパクパク食べるなって、言われてる。そんなつまんないことでもすぐSNSとかで書かれちゃうから」 また別世界みたいな話。 「わたしが家からの連絡を無視してたから、柊真に居場所を探らせたのよ。今から迎えに来るって……」 「いつくらいにここへ来られるんですか?」 「近くにいるみたいで15分くらいで着くみたい」 「だったら、今すぐ出ましょう」 「行きたくなーい。花蓮ちゃんとここにいたい」 「行きますよ」 香雅里さんをひっぱって、エレベーターに向かった。
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