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魔法の時間
本当に来るのかどうか疑わしかったけれど、約束の時間の前に、マンションのエントランスに立っていると、15分前にOFFの車がやって来た。
昨日はそんな余裕なかったから見ていなかったけれど、OFFの車は外車のスポーツカーだった。
「乗って」
「どこに行くんですか?」
「早く」
結局乗ってしまったのだけど、どこに行くのかも教えてもらえない。
相変わらず無言。
それでも、そっと運転するOFFを見たら、その顔はやっぱり柊真さんと同じ。
「降りろ」
そう言われて、いつの間にか寝ていたことに気がついた。
「よく知りもしない男の車で寝るとかありえない。いい年して警戒心くらい持てよ」
「ごめんなさい」
「まぁいいや」
目の前にはモノトーンの建物があって、OFFはどんどん中に入って行く。
入り口にプレートにはFULULUの文字。
何のお店だろう?
受付カウンターのようなところまで行くと、OFFに気がついた女性が頭を下げた。
「めずらしいですね、御堂さんが女性のお客様を連れて来られるなんて」
「こいつは特別」
それを聞いた女性が、わたしをじっと見つめて言った。
「確かに。初めてのタイプかも」
「マシにして。あと、簡単に教えてやって」
「わかりました。お任せください」
「どのくらい?」
「2時間くらいでしょうか」
「その頃また迎えに来る」
わたしをその場に置いてOFFは行ってしまった。
「こちらへどうぞ」
結局言われるがまま、女性について行った。
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