魔法の時間

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海沿いの、綺麗な和食のお店に連れて行かれた。 ここは、どの部屋からもその景色が堪能できるように、縦長の造りになっているようだった。 テーブル席もあるようだったけれど、個室に案内された。 もうだいぶ驚かなくなってきた。 「くつろいだら? 誰も来ないし」 そう言われて、大きく息を吐いた。 「今日、何もかも初めての場所ばっかりでずっと緊張していたんですけど、楽しかったです。自分の知らないことがいっぱいあるんだって気がつきました」 「ふうん」 「自分磨きっていうやつですか? 今まで怠ってました。綺麗な人って、綺麗になる努力をしてるから、もっと綺麗になっていくんですね」 「それで?」 「自分もそうなれるように努力していきたいです」 「面接かよ」 ここに来ることも今日の予定に含まれていたみたいで、注文もしていないのに、しばらくすると料理が運ばれてきた。 一品ずつ運ばれてくる料理は、どれも美味しくて顔が笑ってしまう。 「美味しそうに食べるよなぁ」 「美味しいから」 「この前もよく食べてた」 「食べるの好きなんです。体質なのか食べても太らないから調子に乗ってるとこもあるかもしれません」 「それだけ動いてるからだろ? 売り場にいてもじっとしてるの見たことがない。他の定員がぼーっと突っ立ってる時も何かやってるだろ」 「意識したことないから分からないですけど。御堂さんでも食料品売り場で買い物するんですね」 めずらしくOFFが笑った。 「FULULUのオーナーが『ありがとう』って言われたって喜んでた」 「え?」 「何?」 「素敵にしていただいたからお礼を言っただけですよ?」 「そっか。そうだよなぁ」 最後のデザートが出てきたところで、どこかで言わないといけないと思っていたことを口にした。 「今日の、メイクもお洋服も、全部――」 「プレゼント」 「いえ! そんなことしていただく理由がありません」 「恋人へのプレゼント」 「でも、わたしのこと好きじゃないのに?」 「……オレが勝手にやってることなんだから、素直に『ありがとう』でいいんだよ。理由なんかいらない。ほら、何て言う?」 「ありがとうございます」 「それでいいよ。明日も仕事だろ? そろそろ帰ろうか」
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