昔とは違う

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昔とは違う

IKEDAでは、食品を扱うところにいるから、普段はきっちりまとめている髪の毛を、今日は低めのポニーテールにして、後れ毛を残して巻いている。 メイクもがんばった。 颯真にプレゼントしてもらった服の中から、シンプルな黒いニットに、歩くとふわりと揺れるモノトーン花柄のスカートを選んで、足元は5cmヒールのストラップミュールを合わせた。 堂々と中に入るつもりでいたのに、「販売促進部」と書かれたドアの前まで行くと躊躇した。 『背筋伸ばせ』 颯真の声が聞こえた気がした。 思い切って、大きくドアを開け、「お疲れ様です」と言いながら中に入った。 そして、あの、辞令が出た日と同じように、課長の元へ向かった。 「今日、こちらに呼ばれたのはどういった理由でしょうか?」 「あ、小鳥遊さん……何か雰囲気変わったね。えっと、ケーキフェスタなんだけど、去年出展してもらったショップで、「今年は出展しない」ってもめてるところがあって。そこ人気の店だから、君が行って交渉してもらえないかな」 「どちらのショップですか?」 「cachette。大垣くんと一緒に行ってオーナーと話してくれる? 3時にアポがとってあるから」 優次と…… 今更もう、わたしが言い寄ってるとか言わないよね? 優次の方を見ると、気づいていてわざとなのか、ずっとPCから目を離さないでいる。 他のみんなも自分のデスクの方を向いていて、わたしと目を合わすのをさけているように見えた。 違う。 そうじゃない。 みんな忙しいんだから、他のことに気をとられてる暇がないだけ。 わたしは、大丈夫。 「わかりました」 課長に返事をした。
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