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そのまま、流れみたいな感じで颯真の車に乗ったものの、一体何が起きたのか分からないでいた。
alternativeの副社長という肩書きは、そんなに権力があるものだったんだ。
「オレのことを利用すればいいって言ったろ? イケメンで金持ちの彼氏がいるって言ってやれば良かったのに」
「……それ、自分で言う?」
「間違ってないし。あんな男のどこが良かったわけ?」
「そうだね。どこが良かったんだろう」
「オレの方がいいだろ?」
「それは……どうかな」
颯真はわたしの返答を聞いて、おかしそうに笑った。
それを見て、わたしも笑うことができた。
「花蓮はオレのことを何も知らないよなぁ」
颯真はそう言ったけれど、十分すぎるくらいわかってる。
優次なんかより、颯真の方が、何倍も何百万倍もかっこ良くて、優しい。
そして、わたしを好きじゃないことも、知っている。
IKEDAの前まで送ってくれた颯真に、別れ際、ケーキの箱を渡した。
「わたしのせいで買えなかったでしょ? お礼」
「いいよ」
「颯真のためじゃない。香雅里さんに」
「ああ……」
「わたしも香雅里さんのこと好きだから」
「悪い」
「送ってくれてありがとう」
「うん」
颯真の車が見えなくなるまで見送った。
「香雅里さんのことになると素直だよね」
無意識につぶやいていた。
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