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パーティ会場に足を踏み入れてからほんの少ししか経っていないはずなのに、既に何時間もここにいたみたいだった。
これがいつまで続くのかと思っていたら、また男性がひとり近づいて来た。
「颯真、ちょっと」
男性は颯真に声をかけた後、わたしに優しく微笑んだ。
「お嬢さん、少しの間颯真を借りるよ」
会釈したものの、誰だかわからない。
それでも颯真のことを呼び捨てにしたのだから、きっと近しい関係の人だと思った。
「今の、颯真のお父さんよ」
振り向くと、香雅里さんと柊真さんが立っていた。
「どうしよう……わたしちゃんと挨拶もできなくて……」
「大丈夫だよ。父は息子の交友関係に口を出すような人じゃないから」
「気にしなくて……嫌だ……」
「香雅里さん?」
「また後でね。嫌な人がこっちに来る」
香雅里さんまでどこかに行ってしまって、その場に柊真さんと残されてしまった。
「香雅里さんどうしたんでしょう?」
「多分、向こうの男性がこっちに来ようとしたから」
柊真さんの視線の先に恰幅のいいい男性がいたけれど、もうこちらを見てはいなかった。
「香雅里にいつも見合いの話を持って来る親戚。香雅里は嫌がっていつも彼から逃げ回ってる」
「そうなんですね」
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