ガラスの靴はないけれど

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ガラスの靴はないけれど

香雅里さんから招待された「ちょっとしたパーティ」の会場に着いて、入口で固まってしまう。 ナニコレ? 事前に「楽しい格好で来てね」と言われてはいたけれど、まさか仮装パーティだとは思ってもみなかった。 だから、普通にパーティ用として売っていた薄い紫のレースのワンピースを着ているわたしは、見事に浮いている。 そもそも受付の人がドラキュラと狼男だった。 「気軽な集まりだから」と言われていたけれど、どの辺が気軽なのかさっぱりわからない。 きょろきょろしながら歩いていると、美月さんに会った。 わたしがIKEDAに異動になって、1日だけだけど、初めて一緒に仕事をした人で、alternativeの社員さん。 美月さんは、スターウォーズのレイア姫の格好をしていた。 「それ、一般人の仮装?」 「そういうことにしてください」 「『楽しい格好で来て』って言われなかったの?」 「言われました、でも、まさか仮装だとは思いませんでした」 「相変わらずね」 「美月さん似合ってます」 「当たり前じゃない。招待された人は、みんな本気だから」 本当に、みんな本気で仮装している…… 「小鳥遊さん?」 声のする方を見ると、深川さん、じゃなくて、香雅里さんの祖母にあたる深水会長が、魔女?の格好で立っていた。 「それ、一般人の仮装なの?」 美月さんと同じことを言う…… 「そう思っていただけると助かります」 「香雅里にはもう会った?」 「これからです」 「会ってやって。ケーキぱくついてたから止めてきて」 香雅里さんは、どんな時も香雅里さんらしい。 わたしは深水会長に頭を下げて、香雅里さんの元へ向かった。
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