どうして?

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「村中さん、毎年の北海道物産展のことなんだけど」 「資料もらえたら目を通しておきます」 「あ……うん。わかった」 仲がいいと思っていた村中さんに話しかけて、冷たくあしらわれた。 先週まで普通にお菓子の交換とかしてたのに…… 休んでいた間に何があったの? 自分なりにまとめていたこれまでの資料を、イベント毎にフォルダ分けし、全部ファイルサーバーに移動させた。 毎年開催されるイベントの参考になればいいけど。 恒例になったケーキフェスタに、新たに出展をお願いしようと、目星をつけていたお店のリストと、そのお店の詳細をまとめた資料は、優次にメールした。 口頭で付け加えておきたいことがあって、優次の席まで言って声をかけた。 「大垣さん、さっきメールの――」 「もう、やめてくれないか?」 「え?」 「データは全部共有フォルダに置いてもらえればいいから。わざわざ個人的なメールとか送って来ないでほしい」 何? 全然個人的なメールじゃないと思うんだけど? でも、優次のその言葉で、社内の人が何か言いたそうにしているのはわかった。 それでも、誰も何もはっきりとは言ってくれない。 ちょっと頭を落ち着かせたくて、コーヒーでも飲もうと自販機に向かっている時に、給湯室で村中さんが誰かと話しているのが聞こえた。 「――でさ、大垣さんにまだ言い寄ってるの。小鳥遊さんには、はっきり彼女がいるから迷惑って言ってたらしいけど、全然懲りてない感じ」 「えーっ! 怖い〜。どーゆー神経してるんだろうね」 「仲良さそうに見えたのは、大垣さんが我慢してたからだってわかって、かわいそうになっちゃった」 「それでずっとペア組まされて企画やってたとか、大変だっただろうね……」 「今まで、同じ部署だからって、誰にも言わないでずと抱え込んでたとか、大垣さんいい人すぎる」 頭の中がパニックになって、自販機には行かずに、そのまま席に戻った。 わたしが、優次に言い寄ってる? 何をどうしたらいいのかわからなくなって、頭の中が真っ白になってしまった。 その時、清掃会社の深川さんが、わたしのデスクの空っぽのゴミ箱を覗きながら囁いた。 「3Fの女子トイレにおいで」
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