ぱにっくあにまる

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 そして資料として提出された映像。そこには、やせ細った老人が必死に犬を呼ぶ姿。犬も痩せていて、恐る恐るといった様子で老人に近づく。匂いを嗅ぎ、キャウンと鳴くと勢いよく飛びついてきた。  きゃんきゃん、と甲高い声で鳴き続けながら尻尾を振る。老人をもみくちゃにしながら、顔を舐めながら必死に抱き着く。老人は涙を流しながら抱きしめて犬の頭や腹を撫でている。 「ごめんなあ、ごめんなあ! よく無事だった、よく生きてた! もう会えないかと思ったよお!」 「きゃんきゃん、きゃん!」 「ありがとうございます、本当にありがとうございます! 感謝してもしきれません……なんてお礼をすればいいか」 「いえいえ、お気になさらず」  映像の中で男はスマホで飼い主と犬の様子を撮影し続ける。犬は狂ったように鳴き続けながら、尻尾を振って老人から離れようとしなかった。老人は声をあげて泣いている。 「以上。震災時に離ればなれになって三年経ち、寂しさからご飯を食べなくなってこのままじゃ死んじゃうと公園で泣いてた新飼い主の話を聞いて本来の飼い主を探して再会させた時の動画」 「やめろ俺こういうの弱いんだよ」  目頭を押さえながら牧師は映像を止めた。ちなみに犬は飼い主同士の話し合いの結果、元の飼い主が飼うことになったらしい。  新飼い主は今も毎月、ジャーキーやトイレの砂などを送っているそうだ。二人の交流は続いてるよ、と言われて牧師はチーンと鼻をかむ。次の映像もそのまま入っているようなので再生させた。  そこには、二倍以上に膨れた顔のハムスターがドアップで写っていた。ほお袋がパンッパンに膨らんでいる。わたわたと大慌てで口に食べ物を詰めている。  いつものんびりしている印象のハムスターだが、お前そんなに俊敏に動けたのかと思うくらいにすばしっこく走り回る。さすが狂ったように回し車を回すだけはある。 「おらあああああこれは全部俺のもんだ、俺のもんだああああ!」 「アフレコすんな」  冷静につっこみをする牧師に、男はケラケラと笑った。妙に演技が上手いのがまた腹立つ。 「一応聞くが何したんだ。いや見りゃわかるんだが」 「ヒマワリの種を一袋ひっくりかえした」 「カロリー高いからやめてやれ」 「知ってるよ。だから巣穴で全部吐き出したところで全部回収した。ウッキウキで戻ってきて、愕然とした後不貞腐れてた」
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