落合探偵事務所にて

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落合探偵事務所にて

「あーあ、暇だ、暇だなあ......」 「落合(おちあい)さん、独り言はメンタルの不調とも言えますよ」 「わあっ!出たな!中野(なかの)」 「人を化け物みたいに言わないでくださいよ」 「人じゃねえだろオマエ!」 「え、人ですよ」 「人はインターフォンを押して招かれてドアから入るんだよ!」 「窓からじゃダメですか?」 「すり抜けて入ってくるな!」 「じゃあ、インターフォンを押してきまーす」 「やらんでいい!」 幽霊の僕は『人』じゃないですか? 落合探偵事務所へと外から入ってきたら怒られてしまったので フワリと空中を漂いながら玄関へと向かった。 そして玄関のドアをすり抜けて外からインターフォンを鳴らした。 「だから鳴らすなって言ってんだろっ!!」 「あ、あの......お電話で予約をしていた伊崎(いさき)ですが......」 インターフォンを押したのは僕だけど、外には20代くらいの女性が 来た直後だった。 「落合さーん、お客さんですよーっ」 伊崎と名乗った女性が、明らかに僕のほうを見てきた。 「え?やだ、なに?幽霊?えーっ!」 「え、僕の姿、みえるんですか?ひょっとして霊感体質?」 「あ、はい」 「どうも、中野です。中野駅の中野と同じです」 「どうも、伊崎美麗(いさき みれい)です。 探偵事務所の方は落合と名乗ってましたが、 あなたは、どういうご関係ですか?」 「友達でーす」 落合さんが乱暴に玄関のドアを開けた。 「ちょっと、入って、入ってください! そこで変なやりとりしないでください! す、すみません、伊崎さん、失礼しした。 来たことに全く気づきませんでした!」
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