1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの落合さん、伊崎さんが人間じゃないって、
どうやって見抜けたんですか?」
落合さんは自販機にもたれた。
「足音。彼女はね、うちの探偵事務所に来たとき、
高いハイヒールを履いていた。
普通はね、カツカツと音を鳴らすでしょ?彼女は音がしなかった。
だから、うちの事務所の三階の階段を上がる音もしなかった。
来たことにさえ気づかなかった。だから変な感じがした」
「あ、落合さん、チャーハンの出前のとき!」
「そうだよ中野くん、うちのビルは足音が特に響くんだよ。
だから出前を運んでやってくる足音もわかる。
言っただろ?人間はね、ちゃんと足音がするんだよって」
「さすが探偵って感じで、すごい!」
伊崎さんも、かなり動揺した顔つきになっていた。
それから少し大げさに歩いてみる。
土ではない、舗装された道路でも、確かに靴音はしなかった。
「異世界から来たから、体質なのかしらね。
靴音がしないなんて、誰も指摘されなかった。
あのね、こちらでは身体が軽くて早く走れるのよ。
だからすぐ追いつけたの」
「いせかいぃっ?」
落合さんの声が裏返った。
最初のコメントを投稿しよう!