八作村にて

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「あの落合さん、伊崎さんが人間じゃないって、 どうやって見抜けたんですか?」 落合さんは自販機にもたれた。 「足音。彼女はね、うちの探偵事務所に来たとき、 高いハイヒールを履いていた。 普通はね、カツカツと音を鳴らすでしょ?彼女は音がしなかった。 だから、うちの事務所の三階の階段を上がる音もしなかった。 来たことにさえ気づかなかった。だから変な感じがした」 「あ、落合さん、チャーハンの出前のとき!」 「そうだよ中野くん、うちのビルは足音が特に響くんだよ。 だから出前を運んでやってくる足音もわかる。 言っただろ?人間はね、ちゃんと足音がするんだよって」 「さすが探偵って感じで、すごい!」 伊崎さんも、かなり動揺した顔つきになっていた。 それから少し大げさに歩いてみる。 土ではない、舗装された道路でも、確かに靴音はしなかった。 「異世界から来たから、体質なのかしらね。 靴音がしないなんて、誰も指摘されなかった。 あのね、こちらでは身体が軽くて早く走れるのよ。 だからすぐ追いつけたの」 「いせかいぃっ?」 落合さんの声が裏返った。
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