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「ごめんなさい、生贄になんて選んでしまって。
中野さん、おもわず馬鹿って言って、ごめんなさい。
霊が見えるのは、たぶん、元の世界からの体質だと思う。
あちらでは霊的な術とか魔術とかが身近にあるから」
伊崎さんが急にしおらしくなった。
「あー、いえいえ、飴玉を投げちゃって、ごめんなさい」
「ふふっ、可愛い報復だったわね」
「てへっ」
伊崎さんがクスリと笑ってから真顔になった。
「どうしてこんなことになったのか、お話しします」
村に吹く夕暮れの風は都心の湿り気がなく涼し気だった。
「私ね、異国の令嬢なの。親の決めた結婚が嫌で、
こっちの世界へと、逃げてきちゃったのよ」
落合さんの缶ジュースを飲む手が止まった。
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