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それはとても静かに落ちてきた。
夏の日のまだ明るい17時に、青い空からオレンジ色の粒が降ってきた。
そして公園の土の地面へと落ちていく。
みるみるうちに個別包装された飴玉で地面が埋め尽くされてていく。
「さあ、飴玉の中に入って!」
伊崎さんが落合さんを強く押し、飴玉だらけの地面に転倒させた。
「いたたっ、痛い、痛いっ!」
音が無いけど無数に降る飴玉に強く打ち付けられて、落合さんは
立ち上がり、降る位置から逃げようとする。
それを伊崎さんと村正さんが制した。
「飴玉に埋もれてゲートをくぐりなさい、あなたは生贄なのよ!」
ずっと優しい顔つきだった伊崎さんの顔がこわばっている。
「生贄?その為に俺を?人間じゃないと思ってたけど、
そんなことの為に依頼してきたのか」
「え?人間じゃない?しかも生贄って!」
僕より驚いていたのは村長の村正さんだった。
村正さんの力が弱まったところで、落合さんは勢いよく飴玉の振る
位置から抜け出した。
「え?村正さん、知らずに協力してんすか?」
「いや、あの、この現象を村の者が気味悪がって、騒ぎになって、
そのときに彼女、伊崎さんが、よそ者を連れてくれば現象は鎮まると。
とにかく連れてくるから、その人を飴玉の中に突っ込ませたらいいと」
「そんな、あやふやなことを本気で実戦しちゃダメでしょっ!
いい年した大人がっ!ちょっとは変とか思え!純粋すぎ!」
「すっ、すみません!伊崎さんのことは信頼しちゃってて」
「ちゃってて、とか、カワイイ言い方してもダメ!」
という落合さんと村正さんの会話をさえぎるかのように、僕は動いた。
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