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「明日、正午までに神官長がキルタ神殿に現れねば、全島民を斬首する」  キルタ島全域に乱暴で残虐な告知が行き渡ったのは、イリオス王が指示を出して5時間後の事であった。  日の出前、キルタの人々は残酷な通知に震撼した。しかし、既に数百人もが捕まり、理不尽に殺されている現状で、人々は抵抗する気力もなくなっているようだった。  告知に伴って、キルタ全域及び周辺の海域の捜索が行われた。  捜索の指揮をとっているのは、執行官ミジェル。  ミジェルにとって、予想外だったのは西大王、イリオスがジュリアの生け捕りに執着したことだった。  ミジェルがジュリアを魔女裁判で火炙りにしようとしたことを知ったイリオス王は、烈火の如く怒り、「私はそのようなことを命じてはいない!」と叫んだのだと言う。  今まで侵攻した国々で、欲しい女を思いのままにしてきた。  王が口を挟んで来たことは、一度たりとてない。  どう攻め落とすかは、執行官である自分に任せてくれているのではないのか。  そもそも王は自分がジュリアを手に入れたいことを知っている筈なのに。  ジュリアには、一体何があると言うのだろう。  思い通りにならない、あの娘。  ジュリアを思い浮かべ、ミジェルは歯ぎしりした。  王から生け捕りを言い渡されている。  殺しはしないが、嬲り尽くしてやろう。  仄暗く強い思いを胸にし、神殿の高台から夜が明けない街並みを眺めた。 「キルタの魔女め。我が手に捕らえたら許しはせぬ、覚えておくがいい」
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