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13
「地下にネズミが入り込んだようです」
報告を受けたミジェルは、ニヤリとした。
夜明け前、島民惨殺の触れが出ればジュリアはやって来ると思っていた。
イリアス王からは傷つけるなと命が出たが、王には見つからなかったとでも言っておけばいい。
王を欺いたとしても、ミジェルはジュリアを手に入れようと考えていた。
手に入れた後は、砂地宮殿の奥深くに連れて行き、自分以外誰の目にも触れさせないようにすればいい。
そう遠くない内にジュリアも真の愛に目覚めるだろう。
神へ捧げる愛と言うのならば、海賊やイリアス王を倒し、自分が神になればいいのだ。
仄暗い妄想は、甘美な美酒のようにミジェルを陶酔させた。
ミジェルは剣を掴んで立ち上がった。
キルタの神殿内部については、到着後から隈なく調べた。
兵に任せるのではなく、自分の足で。
おかげでジュリアを閉じ込めるのに使った地下牢がある事も分かった。
ジュリアを地下牢に閉じ込めた時に、音の反響がかなり大きいことに気づいた。
地下牢以外にも空間があるはずだ。
捕らえた神官たちは一様に、地下牢以外の存在を知らなかった。
存在を知られていない秘密の空間。
今そこにジュリアが向かっているのだとすれば、答えは一つ。
探し求めているパパティアナは、そこにある。
神殿地下に行く道筋は、いくつもある。
一つは今自分がいる神官長の部屋から。
ジュリアが使っていた部屋だからと言うこともあり、ミジェルは部屋を隅々まで確認した。
その時に、衣装棚の奥に隠し扉があるのを見つけた。扉には鍵がかかっていて諦めたが、きっとこの部屋のどこかにあるはずだ。
探し出して、地下に行く。なんとしても。
ミジェルは衣装の一枚一枚を調べ始め、かかっていた一枚ローブのポケットに鍵が入っているのに気づいた。
「魔女め、こんなところに。私を馬鹿にしおって」
言いながら、ローブを顔に押し当てる。
もうすぐジュリアと世界が自分の物になる。
心は昂り、逸った。
鍵と剣を手にして、すぐさま隠し扉に向かう。
隠し扉に鍵を差し込むと、ガチャリと音がして音もなく大理石の壁が動き、地下への階段が現れた。
ニヤリとして、ミジェルは石段に足を掛ける。
途端、足をかけた石段が崩れ落ち、ぽっかり穴が開く。
「くっ!」
心が逸り過ぎて警戒を怠った。
兵たちに、部屋に近づくなと言ってあったことも、マイナスに作用した。
かろうじて石段の縁に手をかけて上がろうとしたが、つけた筋肉が邪魔をした。
「うわぁぁぁぁ!!!」
叫び声と共に、ミジェルは開いた石段の奥底へ落ちて行く。
ミジェルを飲み込んだ石段と開いた扉は音もなく、何の力も借りずに元に戻っていった。
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