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「見れば見るほど、すごい造りだな」   辺りを見回しながらシアーが呟く。 「敵を警戒してのからくりがアチコチに仕掛けてある。あの床を見てみろ、床石の色が変わっている。あれは動くぞ。落とし穴になっている。落ちれば串刺しニンゲンの一丁上がりだ。気をつけろよ」 「あっちは影のトラップだ。松明の灯りで照らされる部分の影に反応する。うっかり歩いて影を感知すれば、頭が弓矢の的になり、矢頭ニンゲンの一丁上がり」    ザホスも辺りを注意深く見回しながら言う。  地下のトラップ構造を瞬時に見抜く二人はただの海賊ではない、とジュリアは思った。  アレクを始め、海賊たちは身のこなしや所作が海賊らしくなく洗練されている。  海賊は粗野で乱暴、そんな印象があるからかキルタの人々は洗練されたアレクをキルタの鷲と呼び、受け入れたのだろう。  アレクたちは略奪もしないし、他の海賊が現れたときには守ってくれる。  人々が慕うのも当然と言えた。  ジュリアは壁に手を当て、慎重に垂れ下がっている蔓植物を引いた。  大きな岩壁が動き、脇道が現れる。  シアーとザホスは再び目を見張る。 「脇道が現れたぞ」 「一体どうなってるんだ?」  驚く二人にジュリアが説明する。 「本道は神のための道。神に仕えし我々人間は脇道を行くべし」 「なるほどな、神さんのための通路と人が通る通路は違うんだ。そのまま進めば何かしらのトラップがあるって訳か」 「これだけのからくりだ。そろそろ本命の部屋に近いんじゃないか」  二人の見立てにジュリアが頷いた。 「もう少しです、急ぎましょう」  壁にぽっかりと開いた間口は、三人が中に入ると音もなくしまって、どこに扉があるか分からなくなった。  脇道の壁にはうっすらと白く発行する石が使われていて、松明がなくても問題なく歩くことが出来た。  しばらくすると一際発光している扉と思われる一枚石が現れた。  三人はその前で立ち止まる。  ジュリアは結んでい腰紐をシュルリと解いた。  シアーとザホスは慌てて目をそらす。 「ひ、姫さんっ?」    ジュリアは腰紐についた鉱石を壁の凹みに押し当てた。  鉱石は凹みにスッポリとハマる。  ゴゴゴゴ、と低い地張りがすると石にヒビが入り、左右に開いた。  おびただしい青い光が三人を包む。 「これは!!!」 「パパティアナでできた地下空間か、なんという美しさだ!」  シアーとザボスは目を見張った。 「そこまでだ、魔女と海賊ども!!!」  突然後ろから声がして、ジュリアは自分の首が締まるのを感じた。
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