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  シアーとザホスが瞬時に剣を抜いて身構える。 傷だらけのミジェルが、ジュリアの背後を取り、首筋に剣を押し当てていた。 「くっ! 俺としたことがパパティアナに気を取られた!」 「姫さんを離せ!」  ジリジリと距離を詰めるザホスとシアーにミジェルが鋭く言った。 「魔女を傷つけたくなくば、剣を捨て、我らから離れろ!」  ガシャン、と金属音が響く。  二人が剣を床に投げ捨てた。  そろり、そろりとザホスとシアーが後退る。  二人が離れたのを確認し、気を抜かずにミジェルがジュリアに問いただす。 「魔女め! 手間をかけさせて。おまえは海賊にも色目を使うのだな?」  ミジェルの言う意味が分からずに、ジュリアは黙っていた。 「男と見れば色目を使う。海賊たちがお前と行動を共にしているのだろう。卑しいにもほどがあるな」  ミジェルは奈落に落ちた後、既のところで串刺しになるトラップを避けて、岩をよじ登り地下通路まで這い上がってきた。  這い上がってきたところ、ジュリアと海賊たちを見つけ、機会を伺っていたのだった。  パパティアナの地下室が開き、海賊たちの注意がジュリアから逸れた隙をミジェルは逃さなかった。  憎くて愛おしい女を羽交い締めにする。  ジュリアは抵抗しなかった。  この女はもしかすると、自分を待っていたのではないか、とさえ思える程に。  ただ、この女は海賊にも色目を使った。  その事が腹立たしく、抑え難い怒りが湧き上がってくる。  嫉妬、と言う気持ちをミジェルは知らなかったが、怒りをジュリアにぶつけた。 「魔女、お前は海賊王や海賊に抱かれたのか?」  ジュリアは冷静に答えた。 「私は神官長です。私がこの身を捧げるのはキルタを守りし神のみ」 「嘘を言うな! お前は海賊に助けられてから毎晩抱かれていたのだろう? 下劣な女。神官長とは笑わせる。いいか、お前は私と共に砂地の宮殿に来るんだ。一生そこに閉じ込めて、不埒なことなどできないようにしてやる」  剣をジュリアの首に押し当てながら、無理やり口づけようとしたが、ジュリアが激しく首を振った。 「やめよ!!」 「モテない奴と言うのは、本当に女の扱いが下手だな」  ミジェルが振り返ると、ミジェルの首に剣が押し当てられていた。  音もなく舞い降りたかのように現れたアレクとイリアス王の姿に、ミジェルは歯ぎしりした。  また、やられた。  神官長に脅しをかけるための火炙りの際にも、どこからともなく現れて、あっという間に自分の手から神官長を連れ去った。  今回も、神殿内部に流れ込んでいる潮に乗り、小舟をバダマが漕ぎ、アレクと目隠しされたイリアス王が地下神殿にやってきた。  バダマがジュリアをミジェルの手から助け出す。  イリアス王がミジェルの前に立った。 「私はお前に神官長を傷つけよ、とは命じておらぬ!」 「恐れながら。私はもう、あなたにつかない。パパティアナと神官長を手に入れて、この世の神となる」  そう言うとミジェルが再びジュリアに手を伸ばした。  瞬間。  パパティアナがより強く発光し、光の束がミジェルを打った。  雷に打たれたような衝撃にミジェルは床に倒れ伏して動かなくなった。
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