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「海賊が出るようになったらしいよ」 「荒くれ者の海賊だそうだ」 「ただ、海賊たちは丘には悪さをしない」 「沈んだキルタの宝石を探しているんだとか」 「キルタの宝石を手にしたものは世界を手にする」 「そんなのただの伝承だ」 「西大王国のアレクス王は強い。神に愛されし王妃もおわす。西大王国は何があっても安泰さ」  人々が噂しあった。  その海賊船は夜になると現れ、キルタ島の周りで沈んだパパティアナを探しているという。  幽霊船なのか、世界を手に入れようと執着する者なのか。  誰も知らない。  海中深く。  砂地に埋もれた海神ネプチュニスの彫像に彫られた瞳が、薄く、青く発光した。 ◇ ◇ ◇  王宮の窓辺から、海を眺めているジュリアにそっと近づき、抱きしめるアレク。  驚く仕草すら可愛らしい、とアレクは思う。 「今日のお仕事は終わったのですか?」  尋ねるジュリアの耳元でアレクは、甘く優しく囁いた。 「あぁ。これからオレの時間はジュリでいっぱいにする。だから一時もオレから離れようと思うなよ」  甘く瞳を輝かせるアレクにジュリアが微笑む。 「随分な暴君ね」  それ以上の口答えは許さない、と言うようにアレクはジュリアの唇を柔らかく、情熱的に塞いだ。 〈了〉
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