27人が本棚に入れています
本棚に追加
19
「海賊が出るようになったらしいよ」
「荒くれ者の海賊だそうだ」
「ただ、海賊たちは丘には悪さをしない」
「沈んだキルタの宝石を探しているんだとか」
「キルタの宝石を手にしたものは世界を手にする」
「そんなのただの伝承だ」
「西大王国のアレクス王は強い。神に愛されし王妃もおわす。西大王国は何があっても安泰さ」
人々が噂しあった。
その海賊船は夜になると現れ、キルタ島の周りで沈んだパパティアナを探しているという。
幽霊船なのか、世界を手に入れようと執着する者なのか。
誰も知らない。
海中深く。
砂地に埋もれた海神ネプチュニスの彫像に彫られた瞳が、薄く、青く発光した。
◇ ◇ ◇
王宮の窓辺から、海を眺めているジュリアにそっと近づき、抱きしめるアレク。
驚く仕草すら可愛らしい、とアレクは思う。
「今日のお仕事は終わったのですか?」
尋ねるジュリアの耳元でアレクは、甘く優しく囁いた。
「あぁ。これからオレの時間はジュリでいっぱいにする。だから一時もオレから離れようと思うなよ」
甘く瞳を輝かせるアレクにジュリアが微笑む。
「随分な暴君ね」
それ以上の口答えは許さない、と言うようにアレクはジュリアの唇を柔らかく、情熱的に塞いだ。
〈了〉
最初のコメントを投稿しよう!