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3
島民の噂どおり、ジュリアは美しい女性だった。
ミジェルは、自分の女にしても良いと思っていたのだが、実際にジュリアはまったく自分の思いどおりにならない。
数カ国を略奪し、気に入った女を欲しいままにしてきたミジェルにとって、抵抗されたのは初めての事で、ジュリアに対する苛立ちと憎しみが一気に燃え上がった。
この女を困らせたい。
この女を自分の足元にひれ伏させたい。
そんな仄暗い欲望が胸に広がる。
ミジェルは大声で叫んだ。
「この女は異教の神への信仰を扇動し、人々を誘惑した穢らわしい魔女だ! 明日、魔女裁判ののち、火炙りとする!」
ミジェルの叫びによって、ジュリアは捕らえられ、神殿の地下牢に放り込まれた。
神殿の女性神官たちを褒美として、兵に与えられ、男性神官たちは捕らえて捕虜船へ連れて行った。
キルタの信仰心である神殿を完全に制圧し、神官頭のジュリアを投獄すれば、島民の戦闘意欲も下がるだろう。
自分たちの守護神が何もしてくれないことも分かって改心もするだろう。
そして、神殿のシンボルである美しい女性神官を穢せばいい。
ミジェルたちは神殿をキルタ島制圧における根城とした。
しばらく経ってからミジェルは地下牢へジュリアの様子を見に行った。
おそらくあの神官は縛られることも地下牢に入れられることも初めてで恐怖に慄いているだろう。
懇願するなら、今回だけは許してやろう。
そう思って地下牢に降りたのに、ジュリアは泣きも懇願もしなかった。
自分の方を見もしない。
ただ、祈っているだけだった。
腹立ち紛れに叫んだ。
「お前は明朝、魔女裁判にかけられる。魔女と判断されて磔にあい、燃やされる。私にした仕打ちを後悔しながら、朝を迎えればいい!」
ジュリアは、ミジェルの脅しにも一向に反応せず、ミジェルは胸に吹き荒れる怒りと共に地下牢を去り、辺りはまた闇と静寂に包まれた。
ジュリアは地下牢で跪き、キルタの守護を一心に祈った。
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