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「多分、西大王国は、神官殿がパパティアナの所在を知っていると踏んだのだろう。火炙りにすれば泣き叫び、神殿の秘密を話すと思ったんだろうな」  俯いて、少しだけ考え込むジュリア。 「西大王国の現王は、代々の直系ではない。ガレー船の奴隷上がりだと言われている。俺は奴隷制には反対だが、奴隷の中には根性があるやつもいるもんだ」  冗談めかして言っているが、ジュリアにはまっすぐ一点を見つめているアレクの瞳に怒りの炎が燃え盛るのが見えた気がした。  それがなぜなのかは分からないが、心にトゲのように引っかかる。  アレクの瞳はどこかで見たことがあるような気もする。  でもそれがどこで見たのかは思い出せず、記憶違いだろうと思って黙った。 「まずは敵情視察と行くか。明日にでも西大王宮殿に潜り込んでみる。神官殿はキルタに帰してあげたいが、ミジェルたちに制圧されている今、帰るのは危険だと思う。しばらく海賊船(ここ)でゆっくりするといい。なぁに、見た目は怖いが、気の良い奴らさ」  そう言うとアレクは扉に向かって声をかける。 「おまえら、どうせ聞いてるんだろ? 入れよ!」  扉が少しだけ開いた。  おずおずと、入ってきたのは海賊船(ここ)海賊(クルー)たちだった。 「普段は女人禁制と喧しい頭が連れてきた女だ。さぞや美しかろうと覗いていたんだがな」  そう言ったのは、額から頬に傷のある男だった。  アレクより少しだけ年上だろうか。  ガッシリとした体躯に金茶の髪と用心深そうな瞳、それから毛むくじゃらの胸は熊を思わせた。 「こいつは、バダマ。別称キルタの大熊」  自分の感想とアレクの紹介が合致していたことが可笑しくて、ジュリアはクスッと笑った。 「お、姫さん。今、当たってるって思ったろ? キルタの大熊は役に立つんだぞ」   ジュリアの笑いを受けてバダマが言う。  アレクも笑いながら、紹介を続けた。 「隣の長髪一本縛りがシアー。別称闇夜のピューマ」  筋肉質だがしなやかな細身筋肉質で、褐色の肌に黒髪のシアーは黒いピューマを思わせた。  シアーはジュリアの手を取ると指先に口づけた。  キスに慣れていないジュリアは、シアーの唇を指先に感じて頬を染めた。 「これはこれは。可愛い姫君ですな」  アレックスはジュリアの手を握っているシアーの手をパンッと払いのけた。 「悪ふざけはするな」 「おやおや、心外な。お頭殿だって知っているじゃないですか。これは騎士の挨拶だ、って」  ニヤニヤしながらアレクを見るシアー。  アレクは憮然として横を向く。
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