のびると言えば?

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ある日の昼下がり、 ボクは見知らぬ女性と部屋にいた。 今から約20分前─ 昼メシを食べようと準備していたら 扉をノックする音が聞こえた。 出てみるとそこには 二十代半ばくらいの 可愛いらしい女性が立っていた。 顔もスタイルもちょっと自分好みだったので見とれていると、 「こんにちわ。突然ごめんなさい。 私、小説を書いてるんですが、最近なかなかアイデアが浮かばなくて…。良かったら一緒に考えていただけませんか?」 一瞬、何かの勧誘かと疑ったが特に物を売りつけようとする気配はなく、手にはメモ帳と鉛筆を持っていた。 「えっ?小説…家さん…?」 「あ、まだ有名でも何でもなくて…。ごめんなさい。迷惑ですよね?失礼しました。」 そう言って帰ろうとする背中がションボリして見えたので思わず 「い、いいですよ!ボクでよければ!」と呼び止めてしまったのだ。 ─そして今、 小説のお題「のびる」について アイデアを出し合っているのだった。 「のびると言えば思いつくものは?」 「チーズ!」 「それはありきたりだわ。」 「身長!」 「うーん、いまいち。」 「ひげ!髪!爪!はな毛!」 「きゃははは。なにそれー。」 近くで見るとますます可愛い。ボクの鼻の下はすっかり伸びきっていた。 お題なんかどうでもいいやとカノジョに抱きつこうとした時、 「ねぇ、アレ…?」 とカノジョがキッチンの方を指さした。 「あぁ!!しまったぁ!!」 そこには昼メシを食べようとお湯を入れたままのカップラーメンが…。すっかり忘れていた。ションボリするボクの背中を見てカノジョが言った。 「ごめんねぇ。すっかりのびちゃったね。」 ─おしまい─
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