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「僕は、悲愴型だよ。実はもう発症してるんだ!」
見栄を張り、気づけば僕の口から見え透いた嘘が飛び出していた。
「マジ? 何で黙ってたんだよ~……」と、目を見開きながらも、藤は怪訝そうな顔をする。そして、そんな藤の言葉を遮って、杉本が「アメーィジング!郷田くんもぉ~♪発症していたのねぇ~悲愴型なのねぇ~~~♪」と歌いだす。
静香は、そんなみんなの様子を傍観して「ふふふ」と笑っている。
あぁ、もう後には引けない……
「何か言い出しにくくてさ……」と、僕は頭を掻いた。
「確かに、悲愴型って滅多に発作起こさないもんね」と、静香が優しく肯定してくれる。
僕は静香のその言葉を聞いて、胸がチクンと痛んだ。
だが、そんな僕の後ろめたい気持ちをかき消すように「じゃあ、郷田が悲しくなるようにこれから全力で仕向けるかな」などと、藤が悪戯に笑って恐ろしいことを言い出す。そして、またしても杉本が「オ、オ、オ、それはぁ~~♪面白そうねぇ~♪」と歌う。
僕の頭の中は、これからどうやって取り繕うべきかということでいっぱいになった。「そろそろ真面目に……」と始めたテスト勉強にはちっとも身が入らず、終始上の空だった。
帰ったら即行で動画アプリで悲愴型の投稿チェックしなくては。
練習もしておいた方が良いかな……
僕、結構やばい嘘ついちゃったかも?
本当は嘘だったってバレたら、藤は怒るかな……呆れるかな。静香はなんて思うかな……嫌われちゃうかな……
本当は発症していないことがバレた時のことを考えて、お腹が痛くなってきた。
あぁ、どうしよう。
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